TG/1/3

原版 英語

日付 2002年4月19日

植物新品種保護の為の国際同盟

ジュネーブ

 

区別性、均一性及び安定性の審査と

植物新品種の調和的描写の整備にかかる概論

 

第1章 概論

 

1.1          UPOV条約(1961年、1972年及び1978年条約)の第7条及び1991年条約の第12条によれば、植物新品種に関する保護は、当該品種が、その登録申請の際にその存在が一般に知られている他の品種から見て区別性 distinct(D)があり、十分に均一 uniform(U)であり、安定性stable(S)があること(簡略化すると「DUS」)を充足する審査の後に限って与えられる。そのための試験またはDUSテストは、育成者権を与えるのに適した機関またはその機関に代わり審査行う公的リサーチ機関や、場合によっては育成者自身によってなされる育成試験を主なものとする。試験の実施は、関連する形質(たとえば、植物の高さ、葉の形状、開花時期など)を用いることにより、品種の描写を生み出すことになり、それにより、1991年条約の第1条4項が定める品種として認められることになるのである。

 

1.2          本書(以下「概論」という)とそれに付随するテスト指針(以下「TGP書類」という)に詳述される一連の書類の目的は、DUS審査に用いられる原則を記述することである。これらの原則を明示することにより、新品種の審査が同盟のメンバーの間で調和のとれた方法で行われることを確実にすることができる。この調和により、DUSテストにおける協力や、保護品種の調和のとれた国際的に理解される描写による効果的な品種保護を提供することができる。

 

1.3          同盟のメンバー国が拘束されるのは、UPOV条約の本文のみであり、本書は、同盟のメンバー国が関係する条約に矛盾するように解釈されてはならない。 しかしながら、実務上の経験から、この概論は、UPOV条約に従ったすべての種の審査に対する一般的な手引きを提供することを目的とするものであり、また本書はUPOVの理事会で採択されたものである。加えて、UPOVは、多くの個々の種や他の品種の分類のために「区別性、均一性、及び安定性のテスト実施指針」またが「テスト指針」を発展させてきた。「テスト指針」の目的は、本書と付属するTGP書類に含まれる一定の原則を、DUSの調和のとれた審査のため、特にDUS審査と調和のとれた品種の描写に必要な適切な形質の確定のために、詳細な実務的な手引きに落とし込むための工夫をすることである。本版の概論の採択に先んじて作成されたテスト指針は、その時々の版に従って作成されたものであり、次の改訂時に更新される。

 

1.4          個々のテスト指針は、適切な技術実行当事者により準備されたものである。これらの当事者は、同盟のメンバー国政府の選任した専門家と関係国及びオブザーバーの組織から招いた専門家で構成されている。植物育成分野の主な国際非政府組織と種苗産業は、テスト指針の草案に対し、採択前にコメントを行う機会が与えられ、育成者と種苗産業の知見が反映できるものとなっている。一旦作成されたテスト指針は、技術委員会に同意を得るために提出される。UPOVで採択された個々のテスト指針のリストと採択されたテスト指針のコピーを入手する方法に関する情報は、TGP書類2の「UPOVの採択したテスト指針リスト」で見ることができる。

 

1.5         本書は、テスト指針の作成に関する手引きを提供することに加えてDUSテストのすべての観点を述べることを目的とし、TG書類/1/2「新品種の区別性、単一性と安定性に関するテスト実施の為の指針に関する概論改訂版」、これはその名が示すようにテスト指針の概論の役目を果たしていた書類であるが、この書類に代わるものである。

 

1.6         テスト指針がDUS審査の一定の観点に関する詳細な実務的な手引きを提供し、品種の描写に必要な適切な形質を明確にするものであることから、これを、すべての個別の指針に重ねて書き入れられることは適当でなく、むしろすべてのテスト指針に適用される一般的な観点がある。

 

1.7          DUS審査担当者がテスト指針の詳細な推奨に従うよりも概論に含まれる基本原則を用いるという状況もある。それは、DUS審査担当者が、推奨される方法が個々の状況において最適ではないと判断する場合である。このような場合等、テスト指針に従えない場合には、DUS審査担当者は、可能な限り当該種の描写とDUS審査を調和のとれた方法で行えるよう、どのように審査を進めるかを検討しなければならない。

 

1.8         加えて、対象の種や品種群にテスト指針がない場合には、DUS審査担当者は、この概論の特別な章(第9章 テスト指針がない場合のDUSテストの実施)に依拠することになる。

 

1.9         結論として、DUS審査担当者は、本書に記載する原則を熟知し、適切な個別の指針とあわせそれらの原則を検討することが重要である。

 

1.10       本書と付属するTGP書類は技術委員会により常に見直される。同盟のメンバーは、UPOVから直接更新された版の書類を受け取るが、すべての書類の最新版は、TGP書類/0により入手可能であるので、手元にある書類の有効性について疑義があるときに参照されたい。

 

1.11        本書でも用いられている技術的な用語集は、TGP書類/14「UPOVの書類に用いられる技術的、植物学的、統計的用語集」に集められている。

 

第2章 区別性、均一性及び安定性(DUSテスト)の審査

 

2.1     審査の要件

UPOV条約(1961年、1972年及び1978年条約第7条及び1991年条約第12条)は、品種が区別性、均一性及び安定性の基準に従って審査されることを要求している。UPOVの1991年条約は、「審査の実施過程で、当該品種を育成しまたは必要なテストを行い、または品種の育成または必要なテストを実施させ、またはそれまでに行われた他のテストまたは試行の結果を考慮することができる。」と明確に述べている。

 

2.2     DUSテストの基礎としてのテスト指針

2.2.1      UPOVが個別の種や品種群について具体的なテスト指針を確立している場合には、新品種の審査についてのアプローチ方法については合意され協調されており、概論に含まれる基本原則とともにDUSテストの基本を形成するものである。 

 

2.2.2      UPOVが個別の種や品種群について具体的なテスト指針を確立していない場合には、本書の基本原則ととりわけ第9章「テスト指針がない場合のDUSテストの実施」における推奨に従って審査を実施すべきである。第9章の推奨は、指針がない場合に、DUS審査担当者が新しいテスト指針を作成するかのように一般的な方法で実施するアプローチを基本としている。

 

2.3  DUS テストの計画

育成試行や他のテストの計画は、成長周期の数、試行のレイアウト及び試験する植物の個体数及び観察の方法などの様々な観点からみて、試験する品種の性質によっておおよそが決定される。計画に関する手引きはテスト指針の主な機能である。テスト指針の作成に関する手引き、これには試行やテストの計画を含むが、TGP書類/7「テスト指針の作成」に定められている。

 

2.4     DUS審査の基礎としての形質

2.4.1       品種が保護する価値のあるものといえるには、まず、明確に定義されることが必要である。品種が定義された後に、保護に必要なDUS基準を満たしているかのテストが実施されることになる。UPOV条約のすべての条項は、品種は、その形質によって定義され、それゆえその形質がDUSで試験されうる基礎となることについて定めている。

 

2.4.2      UPOVの1991年条約第1条4項には、品種は、「その遺伝子型または遺伝子型の結合から 帰結される形質の発現により定義され」「少なくともその性質の一つの発現により他の植物群と区別されうる」植物群であると明確に述べている。

 

2.4.3       形質は、品種を定義するのに用いられることに加えて区別性、均一性及び安定性を審査する基礎ともなる。

 

2.4.4       UPOV条約(1961年、1972年及び1978年条約)の6条1項(a)において、区別性は、「一つまたは多数の重要な形質により他と明確に区別されうる」ことにより確立されるとしている。一方、6条1項(d)は、「必要不可欠な形質」において安定していることを要求している。 均一性の基準については、形質の用語は特に述べられていないが、形質が区別性、安定性の基礎とされることにより、均一性の要件が、品種の形質に関係していることは明確に示唆されている。

 

2.4.5      UPOVの1991年条約第8条は、品種の基礎が「その関係する形質において十分に均一であること」により均一性について評価すること、第9条は、品種は、「繰り返す繁殖によって、また特定の繁殖周期がある場合には、そのおのおのの周期の最後に」関係する形質が変化せずに残る場合に安定していると見なされると述べている。第1条6項の、品種が「当該形質の少なくとも一つの発現により、他の植物群から区別できる」との意味は、品種は形質により区別できるものでなければならないとの趣旨である。

 

2.4.6      第4章「DUSテストにおいて用いられる形質」では、DUSテストにおいて用いられる形質の様々な点を検討されている。

 

2.5     DUSテストの為の素材の要件

2.5.1       代表的な植物素材

DUS審査の為に提供される素材は、その候補となっている品種の代表的なものでなければならない。繁殖に特定の周期がある品種、たとえば交雑種や合成種の場合には、テストされる素材は、繁殖周期の最終期のものを含むべきである。

 

2.5.2       提供される素材の一般的な健全性

DUS審査に提供される植物素材は、外観上、健全でなければならず、活力がなかったり重大な病害虫により影響を受けているものであってはならず、種の場合には、特に満足のいく審査を行うための十分な発芽力を備えるものでなければならない。

 

2.5.3       品種の形質の発現に影響を与えうる要素

品種の一つまたは多数の形質の発現は、病害虫、化学的処置(生育抑制剤や農薬)、組織培養、木などの異なる成長段階から採取される異なる台木、接ぎ穂などによって影響を受けるものtである。病気への抵抗力など、特定の要素への反応等は、DUS審査の形質として意図的に用いられることもある(第4章4.6.1参照)。しかしながら、DUS審査に用いられる意図のない要素については、その影響がDUS審査をゆがめるものでないことが重要である。形質によって異なるが、試験実施機関は以下のことを確立すべきである。

(a) テストされる品種はこれらの要素がないこと

(b) 既知の品種も含みDUSテストに含まれるすべての品種は同じ要素の対象となり、またその要素はすべての品種に均等な効果を持つこと、または

(c) 十分な審査が行われる可能性がある場合には、影響を受ける形質は、その要素の発現に関わらず、その植物の遺伝子型による形質の真の発現が決定されるまでは、DUS審査から除外される。

 

第3章 DUSテストにおける協力

 

3.1     試験実施機関の間の協力

3.1.1      同盟の他のメンバー国との協力により、DUSテストに関する審査の時間、費用、数を減らし、収集品種の維持に関係する作業を軽減することができる。DUSテストに関する現在の国際協力協定、モデル的な国際的な実務合意の詳細は、TGP書類/5の「DUSテストの経験と実施」を参照されたい。

 

3.1.2      究極の国際的な協力の形は、品種や育成者にかかわらず、地域的なまたは世界的な集中テストシステムであり、そこでは、品種、関係する育成者に関わりなく、全体として審査は、同盟の他のメンバー国の代理として一つの機関によって行われることになる。環境が、自然にまたは人工的に関係する全ての品種の審査に適合するなら、それは可能である。

 

3.2     育成者との協力

3.2.1      多くの国では、公的な機関によって育成試験が運営されているが、育成者が様々な段階で参加している。

 

3.2.2      政府実施のテストが厳格なシステムで行われている同盟のメンバー国においてもUPOVでは育成者との緊密な協力が推奨されている。同盟のメンバー国の中には、育成者にすべてのテストを行うように要請するシステムを有するものもある。そこでは、本書に記載される原則に従ってテストを実施し、そのレポートを作成するよう義務づけられている。DUSテストにおける判断については、育成者が行ったテストレポートに全面的に依ることもできる。ただし、同盟のメンバー国は、たとえば独立のテストの実施や品種の描写について公表することにより、育成者が行うテストの検証をすることを要する。

 

3.2.3       UPOVは、育成者を代表してまたは育成者により実施されるDUSテストの基礎について、品種の試験の条件リストを提示してきている。条件の詳細は、TGP書類/6「DUSテストの取り決め」に記載されている。

 

3.2.4      TGP書類/6「DUSテストの取り決め」は、生育試験に関係する育成者の他の可能性に関しても有益な情報を提供している。

 

第4章 DUSテストで用いられる形質

 

4.1     DUSテストの基礎としての形質

DUS審査のために形質が利用されることについての基礎は、第2章、2.4において説明されている。本章の規定は、形質とその適用にかかる重要な観点を示すことである。

 

4.2     形質の選定

4.2.1      ある形質がDUSテストで用いられる以前に、または品種を描写する以前に、満たすべき基礎的な要件は、その発現が以下のとおりであることである。

(a)与えられた遺伝子型または遺伝子型の結合に由来するものであること(この要件は、UPOV1991年条約の第1条6項に具体的に示されているが、あくまでそれはすべてのケースの基礎的な要件である)

(b)特定の環境で十分に一貫しており、反復できること

(c)区別性を確立しうるような品種間の十分な違いを示すものであること

(d)正確な定義と認識を可能にするものであること(この要件は、1961年、1972年及び1978年条約第6条に具体化されているが、あくまでそれはすべての場合の基礎的な要件である)

(e) 均一性の要件が満たされるものであること

(f) 安定性の要件が満たされるものであること、すなわち、反復する繁殖の後において、またはそれが適当な場合には繁殖周期の各期の最後において、一貫して反復される結果を生むこと

 

4.2.2      なお、形質が生来的に商業的な価値を持つことは要求されないことを述べておく。しかしながら、商業的な価値を持つ形質が、それが含むべきすべての基準を満たす場合には、それは通常どおりに考慮される。

 

4.2.3       4.8条の「形質の機能的分類」及びTGP書類/7の「テスト指針の作成」において、 テスト指針に含まれるべきさらなる基準が示されている。個々のテスト指針に含まれる形質は必ずしも網羅的なものではなく、有益であって上述の条件に合致する形質であれば、そのような追加的な形質にも拡大される。

 

4.3     形質の発現の状況

品種をテストし、品種の描写が確立するのを可能にするため、テスト指針における個々の形質の発現の範囲は、これを描写するという目的のために記述が複数に分かれ、個々の記述には、数字をふった「Note」が与えられる。発現の記述を複数に分けるにあたっては、形質の発現の型に影響される(以下を参照のこと)。適切である場合には(TGP書類/7の「指針の作成」を参照されたい)、形質の発現の記述を具体的に示すために、テスト指針において、いくつかの品種が例として提供されている。

 

4.4     形質の発現の型

DUSテストにおいて形質の適切な使用を可能にするためには、形質が発現される様々な方法を理解することが重要である。次の各セクションにおいて、発現のタイプを確認するとともにDUSテストへの適用を検討する。

 

4.4.1      質的形質

「質的形質」は、一貫性のない記述で表現されることになる(たとえば植物の性としての、雌雄異性体の雌(1)、雌雄異性体の雄(2)、雌雄単一体の単一性(3)、雌雄単一体の両生体(4)など)。これらの記述は、自明でかつ独立した意味をもつ。すべての記述は、形質のすべての範囲を表現することが必要で、表現のすべての様式は、単一の記述によって描写可能なものである。記述の順序は重要ではない。規則として、形質は環境に影響されるものではない。

 

4.4.2      量的形質

「量的形質」は、その発現が、一方の端から他方の端までの全ての範囲をカバーするものである。発現は、 一つの側面で、連続または不連続の直線のスケールで記録される。発現の範囲は、描写の目的により、複数の記述に分かれる(例えば、茎の長さは、とても短い(1)、 短い(3)、 中間(5)、 長い(7)、 とても長い(9)など)。それが実際的な場合には、それらの記述は、スケールをまたがって、同一とすることが求められる。テスト指針は、区別性について求められる違いを具体的には述べていない。発現の記述は、しかしながら、DUS評価において意味のあるものでなければならない。 

4.4.3  疑似質的形質

「疑似質的形質」の場合には、発現の範囲は、少なくとも一部は連続的であるが、複数の側面で変化に富んでおり(例えば、形については、卵形(1)、 楕円形(2)、丸形 (3)、倒卵形(4))、一つの直線の両端で定義することによって描写することは適当でないものをいう。(不連続の)質的形質に似たものとして、「疑似質的形質」の用語は、個々の発現の記述がその形質の幅を適切に描写するために特定されることを要する。

 

4.5     形質の観察

4.5.1      試行計画         

もし可能かつ有益であるならば、同盟の様々なメンバーが比較可能でかつ信頼のある結果を得られるため、推奨される計画規模、サンプル規模、反復回数及び独立した生育周期の数がテスト指針に記載される。

 

4.5.2      大量のサンプル

形質を審査するのに大量のサンプルが必要な場合については、TGP書類/9の「区別性の審査」及びTGP書類/10の「均一性の審査」に具体的な手引きが掲載されている。

 

4.6     特別の形質

4.6.1      外部要因への反応における形質の発現

生体組織体(例えば病気抵抗力の形質)や化学品(例えば除草剤抵抗形質)など、外部要因への反応に基づく形質は、それらが4.2条に具体的に示される基準を満たす場合に限り使用してもよい。加えて、このような要因には、潜在的に変動があることから、これらの形質がうまく定義され、審査において一貫性があることを確かなものとする適切な方法が確立されることが重要である。 更なる詳細は、TGP書類/12の「特別な形質」を参照されたい。

 

4.6.2      化学構造

化学構造に基づく形質は、それらが4.2条に具体的に示される基準を満たす場合に限り認められる。これらの形質がうまく定義され、審査において適切な方法が確立されることが重要である。更なる詳細は、TGP書類/12の「特別な形質」を参照されたい。

 

4.6.3  一体的な形質

4.6.3.1   一体的な形質とは、数個の形質の単純な結合をいう。結合が生物学的に意味がある場合には、別々に評価されている形質をその後に結合することができる。例えば、長さと幅の割合などは、そのような結合した形質を表す為に結合させることができる。結合された形質は、区別性、均一性及び安定性に関し、他の形質と同程度に審査されなければならない。時には、イメージ解析などの技術的方法を用いて審査することができる。これらの場合の適切なDUSテストの方法は、TGP書類/12の「特別な形質」を参照されたい。

 

4.6.3.2  結合された形質は、「多変量解析」のような方法を当てはめることによって混乱することがあってはならない。多変量解析の使用の可能性は、TGP書類/9の「区別性の審査」で考察されている。

 

4.7     形質の新しいタイプ

分子による形質の使用の可能性をを含む、新しいタイプの形質については、TGP書類/15の「新しいタイプの形質」において考察されている。

 

4.8     形質の機能的な分類

以下の表は、形質が審査及び適切な基準に用いられるよう分類されている。

 

表 形質の機能的な分類

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5章    区別性の審査

 

5.1     UPOV条約による要件

UPOV条約(1961年、1972年及び1978年条約の第6条、1991年条約の第7条)が定める区別性の要件を充足するためには、品種は、その存在が一般に知られている他の品種のすべてと、明確に区別されなければならない。

 

5.2     その存在が一般に知られている品種

あるものが実際に品種であるといえるのか、さらにはその存在が一般に知られている品種であるのを判断する主要な基準は下記のとおりである。これらの基準は、すべての品種に等しく適用され、それが保護される品種であるか否かを問わないし、植物素材であるものにも適用される。それが生態型(ecotype)、在来種(landrace)であるかについても問わない。その存在が一般に知られている品種の課題についてのさらなる整備やより詳細な説明は、TGP/3「その存在が一般に知られている品種」を参照されたい。

 

5.2.1       品種についての判断基準

その存在が一般に知られている品種は、1991年UPOV条約第1条4項に定める定義を充足しなければならないが、これは必ずしもUPOV条約のもとで育成者権を付与されるために必要とされるDUSテストの要件を充足しなければならないことを意味するものではない。

 

5.2.2       一般に知られていること

5.2.2.1    品種が一般に知られていると判断されるための具体的な判断基準は、特に下記の点を含むものとする。

(a)その品種の繁殖が商業化されていること、収穫物が商業化されたものであること、あるいは詳細な特徴が出版されていること。

(b)いかなる国においてであっても、育成者権付与の出願あるいは品種登録簿への登録出願をなしたことは、その出願日において品種が一般に知られているとみなされるが、その出願につき、育成者権が付与されたことあるいは品種登録がなされたことを条件とする。

(c)生息している植物の存在があり、その植物の集合体が公けにアクセス可能であること。

 

5.2.2.2    一般に知られていることは、国や地域の境界により何らかの制限がされることはない。

 

5.3     新品種として明確に区別できること

5.3.1       品種の比較

5.3.1.1    区別性の判断は、一般に知られているすべての品種との関係でなされることが必要である。しかしながら、一般に知られているすべての品種との系統的な個別比較が要求されるものではない。例えば、対象品種が、ある形質の表現において、ある特定の一般に知られている品種のグループと区別されることが確かなほど異なる場合には、対象品種とそのグループの品種との間で系統的に個別比較を行うことは不要である。

 

5.3.1.2    加えて系統的な個別比較をなすことは、ある補助的手法により回避することができる。例えば、品種の形質の公表をすること、利害関係者によるコメントを募集すること、欧州連合メンバー国による協力などが、これは技術情報の交換というフォームによることができるが、補助的な手法として認められる。しかしながら、このことは、当該補助的な手法が他の手法とあわさって、有効に区別性の判断をなしうる場合にのみ認めることができる。このような手法は、一般に知られている品種について、その品種が存在することは知られているが、何らかの実務的理由により、その品種が実際に入手できないような場合に適切である。このような手法については、TGP/9「区別性基準」を参照されたい。

 

5.3.1.3    対象品種が、文書に記録された形質を比較することによって、信頼しうる方法により一般に知られた品種と区別できる場合には、それらの一般に知られている品種を、対象品種の試験栽培の対象に含める必要はない。しかし、一般に知られている品種が対象品種と明確に区別される可能性が見いだせない場合には、その品種と対象品種とは、試験栽培によりあるいは他の適切なテストにより比較されなければならない。DUS審査官の作業量を必要最小にするためという意味において、品種の形質の描写についての調和が重要である。

 

5.3.1.4    品種についての判断プロセスのため、育成者に対し特定の情報の提供が要求されることがある。これは通常は出願書類とともに提出する技術質問書によってなされる。技術質問書の様式は、テスト指針に含まれており、これが、品種区別のために重要な特定の形質情報や、その品種の育成計画に関する情報、その他品種区別のために必要な情報を要求している。技術質問書は、さらに育成者に対して、対象品種と類似する品種を示すこと及びその類似品種との間で区別される形質を提供することを要求している。

 

5.3.1.5    品種の集合体の維持についての指針は、TGP/4「品種集合体の維持」に記載されている。

 

5.3.2       形質により明確に区別される品種

形質によって品種を区別するための基礎については、第2章の2.4で解説する。

 

5.3.3       形質により区別するための基準

UPOV条約は、「明確に区別できる」という文言について詳しく解説していない。この文言の解釈の手引きため、品種の形質によって明確に品種が区別されるための基礎として、次のような要素が構築されている。すなわち、品種は、形質における違いが、

(a)一貫して異なるものであって、

(b)明確に相違する場合には、

明確に区別されていると考えられる。

 

5.3.3.1    一貫して相違すること

5.3.3.1.1 試験栽培において観察したときに、形質の違いが一貫していることを確かにする手法は、2回以上の独立した機会において形質を調査することである。この手法は、一年草及び多年草のどちらであっても、2つの異なる時期に植え付けた植物を観察することによってなされ、多年草の場合においては、1回の植え付け後に2回の異なる時期に観察することによってなすことができる。また、他の手法すなわち同じ年の異なる環境下における観察などの利用については、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.3.3.1.2 しかしながら、環境の影響がさほど大きくないために、2回目の植生サイクルの観察は、品種の相違が相応に一貫していることを観察するために格別必要ではない場合がある。例えば穀物の生育条件がコントロールされている場合、これは温室において温度や光が調節されている場合などであるが、2つの植生サイクルにより観察することは不要である。加えてある品種間で観察される相違が極めて明確であるならば、2つ目の植生サイクルは不要となろう。ただし、これらの2つの場合には、品種の繁殖の特徴や植物の品質などを十分に考慮しなければならない。

 

5.3.3.1.3 個別のテスト指針は、形質の違いの一貫性を示すために、複数回の植生サイクルを実施することが要求されるか否かについて記載しているし、特定の品種について、1回のみの植生サイクルによる観察で足りるかどうかについても記載している。

 

5.3.3.2    明確な違いがあること

2つの品種の形質の違いが明確であるか否かは、多くの要素に依ることになり、特に形質の表現のタイプ(第4章 4.4)、すなわち形質が質的なものか、量的なものか、あるいは疑似質的なものか、を考慮に入れる必要がある。

 

5.3.3.2.1 質的な形質

質的な形質においては、一つあるいは複数の形質が、テスト指針に定める2つの異なった階級値(ステイト)に該当するのであれば、2つの品種の違いは明確であると言える。2つの品種の形質が、質的にいってテスト指針の同じ階級値(ステイト)に該当するのであれば、それらの品種は区別性があるとは言えない。

 

5.3.3.2.2 量的な形質

量的な形質がある場合、当該品種の繁殖の観察及び特徴により区別性が判断される。そのための各手法は本章において後に定める。

 

5.3.3.2.3 疑似質的形質

テスト指針における異なる階級値(ステイト)に該当することは、必ずしも区別性の確立に十分ではない(5.5.2.3参照)。一定の状況下においては、同じ階級値(ステイト)により表現される品種であっても明確に区別されることもある。

 

5.3.3.3    交配種の区別性判断に親品種の生育方法を利用すること

TGP/9「区別性の判断」において、交配種のDUSテストのために、その親品種の生育方法を利用することが記載されている。

 

5.3.3.4    均一性の程度

均一性の程度のみが異なるだけで、形質の表現において何らかの決定的な変化がない場合、それは区別性を確立するための基礎たり得ない。

 

5.4     統計的な手法を採用しないで区別性を評価するための観察

5.4.1       品種間における変化が乏しいケースにおいて、区別性の判断は通常、統計的な方法ではなく視覚による評価による。

 

5.4.2       5.3.3.2.1において説明されているとおり、「質的形質」の場合、一つあるいは複数の形質が、テスト指針に定める2つの異なった階級値(ステイト)に該当するのであれば、2つの品種の違いは明確であると言える。

 

5.4.3       量的な形質の場合、二つのNotesが異なる場合には、明確な相違を基礎付けることが多いが、区別性のための絶対的な基準ではない。種々の要素、例えば試験場の場所、年、環境の違いや品種集合体の形質表現の範囲などにより、形質の明らかな違いは、二つのNotesを超えるものであったり、あるいはそれより少なかったりする。これらについての手引きは、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.4.4       疑似質的形質の場合における、統計的手法を採用しないで区別性を評価するための観察手法について、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.4.5       区別性の判断のために統計が必要とされる場合の手引きは、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.5     統計的な手法を採用して区別性を評価するための観察

5.5.1       一般

5.5.1.1    視覚的に評価される形質と同様、測定的に評価される形質についても、統計的な手法が適用され、観察の結果評価のために適切な手法が選択される。統計的な観点(名目、順序、間隔、比率)からみたデータ構造や測定のタイプは、適切な手法の選択のために重要である。データ構造は、評価方法(視覚的な方法によるのか、測定的な方法によるのか、一定の区画を観察するのか、一つの植物体を観察するのか)、評価方法に影響を与える形質のタイプ、品種の繁殖における特徴、実験設計やその他の要素に左右されることになる。DUS審査官は、統計学上の基礎的なルールを認識すべきであるし、特に統計的な手法が、数学的な仮定や実験計画的な実務、例えば確率化などを利用するものであることを、認識すべきである。したがって、これらの仮定等が、統計的な手法を用いる前に検証されるべきである。いくつかの統計的手法は確固たるものでもあるが、仮に条件がすべて充足されていなくとも、慎重な運用により、利用することができる。

 

5.5.1.2    TGP/8「DUSテストにおける統計的手法の利用」には、DUSテストのために適切ないくつかの統計的手法やデータ構造との関係での手法選択のポイントが記載されているので参照されたい。

 

5.5.1.3    結合された特徴は、それぞれの個別の特徴に加え、結合した特徴が均一性基準を充たす場合にのみ、区別性のために利用できる。

 

5.5.2       視覚的に評価される形質

ノンパラメトリック統計値は、視覚的に評価される形質が、通常のパラメトリック統計値による条件を充足しない尺度により記録される場合に利用することができるものとする。例えば、平均値の計算は、Notesが、等しい間隔を示す等級化した尺度により測定される場合にのみ許容される。ノンパラメトリック手法が採用される場合には、異なる階級値(ステイト)の形質についての代表的な品種例を基礎として確立された尺度を利用することが推奨される。そうすることにより、同じ品種については同じNoteを受け取ることになるのであって、データ解析を促進することになる。視覚的に評価される形質についての詳細な処理については、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.5.2.1    質的な形質

視覚的に評価できる質的な形質については、異なる階級値(ステイト)表現についての直接的な比較が、一般的に区別性を評価するために十分である。従い、ほとんどの場合、結果の解析に関し、統計的な手法は不要である。

 

5.5.2.2    量的な形質

5.5.2.2.1 量的な形質は、必ずしも測定や計測によってのみ評価されるべきものではなく、視覚的にも評価されうる。視覚的に量的形質を評価する方法を、他の品種との間で形質を区別することに利用することに疑義がある場合には、合理的な努力により可能であれば、計測することによるべきである。

 

5.5.2.2.2        類似する品種を直接的な手法で比較することは、常に推奨される。直接的に2つのものを比較する方法は、最も信頼性が高いからである。比較においては、二つの品種における相違点は、それが視覚的に評価でき、計測することも可能であれば容認することができる。しかしながら、そのような計測は、非現実的であって不合理な努力を要する場合もある。

 

5.5.2.2.3 区別性を確立するための最も簡便な方法は、品種間における明確な相違が、一対ごとの比較において、同じ標識であらわれることである。ただし、これらの相違が継続したテストにおいて繰り返し生じることが期待されるものである必要がある。例えば品種Aは、常にそして十分に品種Bよりも大きい、などである。そして、十分な数の個体についての比較がなされたものでなければならない。しかし、多くのケースにおいては、品種の区別を明確に確立することは複雑なものである。この点についての詳細は、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.5.2.2.4      視覚的に観察される形質により区別性を判断する基準のさらなる詳細については、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.5.2.3   疑似質的形質

疑似質的形質のための審査において統計的な手法を用いる場合には、個別ケースごとに異なるのであって、一般的な推奨はなすことができない。

 

5.5.3      量的形質

下記において、品種の特定の繁殖形質に対応し、区別性を判断する典型的な手法の手引きを提供する。

 

5.5.3.1   自家受粉品種、栄養繁殖性品種

UPOVは、量的形質を測定するにあたって、いくつかの統計的手法を推奨している。自家受粉品種及び栄養繁殖性品種については、区別性を判断する手法の一つとして、2つの品種の違いが、適切な期間における、同じ発現について、特定の確立水準の「最小有意差」(Least Significant Difference)について同じであるか上回る場合には、それらの品種は明確に区別できるものと考えることができる。これは、その違いが、仮に同じ階級値の形質であっても同様である。この手法は比較的シンプルなものであるが、自家受粉品種及び栄養繁殖性品種について適切であると考えられている。なぜなら、これらの品種においては、品種間の変化が比較的乏しいからである。詳細については、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.5.3.2      他家受粉品種

5.5.3.2.1    COYD

UPOVは、組み合わせによる何年にもわたる区別性(COYD)解析と称される手法を開発しており、これは何年にもわたる変化を考慮するものである。この解析手法は、他家受粉品種(合成品種を含む)のために主として使用されるが、望ましい場合には、一定の状況下において、自家受粉品種及び栄養繁殖性品種にも用いることができる。この解析手法は、何年かにわたって相違が十分に一貫することが必要であり、相違を何年にもわたって考慮する必要がある。この手法についての詳細については、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.5.3.2.2    精緻COYD解析

COYD解析の精緻化された手法は、環境的な要因が、1年間における品種判断の間隔について重大な変化をもたらしている場合に、原COYD解析を調整するために用いられる。環境的要因による重大な変化とは、例えば遅い春の到来により、heading datesの集中をもたらすような場合である。この手法は、育成テストにおいて、ほとんどの品種が標準誤差の見積もりが20自由度を下回ることがないような場合においては、さらにLSD手法を試みることによって補強される。

 

5.5.2.3.2    ノンパラメトリック手法

統計的な基準が満たされず、COYD解析を用いることができない場合には、ノンパラメトリック手法の適用を検討することになる。

 

5.5.3.3      追加基準

測定可能な量的形質についての詳細は、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

5.6     区別性判断のためのテスト指針

欧州連合のメンバー国は、本書に定める諸原則に基づき、区別性判断のための系統的な手法を定めることができる。区別性判断のための一般的な手引きは、多くのテスト指針に適用されるのであり、そのため、一般的な手引きは、本書とは別に、TGP/9「区別性の判断」に記載されており、個別のテスト指針において逐一記載することをしていない。

 

第6章    均一性の審査

 

6.1     UPOV条約による要件

UPOV条約(1961年、1972年及び1978年条約)の第6条(1)(c)によれば、品種は、有性繁殖をすること又は栄養繁殖をすることによる特別な繁殖形質を除いて、形質が十分に均一であれば、均一性があるとされる。1991年条約の第8条によれば、品種は、繁殖形質により予測することができる変異を除いて、関連する形質が十分に均一である場合には、均一性があるものとされる。したがって、均一性の判断の基礎となるのは形質である。

 

6.2     関連する形質

1991年UPOV条約の解釈のため、関連する形質の意味を明確にする必要がある。品種の関連する形質とは、DUSテストにおいて用いられたすべての形質を含むものであるか、当該品種について育成者権が付与された日において確立している、その品種の記述に含まれるものでなければならない。そのため、自明な形質のすべては、関連する形質であって、テスト指針に記載があるか否かは重要ではない。

 

6.3     繁殖における特定の特徴に基づいた均一性のレベル

UPOV条約は、均一性の要件を特定の繁殖形質に結びつけている。すなわち、完全自家受粉品種、主に自家受粉する品種、近親交配品種、栄養繁殖性品種、他家受粉品種、主に他家受粉する品種、合成品種、交雑品種において、それぞれにおける均一性のレベルは、一般論としてではあるが、異なることになる。

 

6.4     均一性判断のための手法

ある品種における植物体が極めて類似するものである場合、特にそれが栄養繁殖性品種及び自家受粉品種である場合においては、その中で発生する明らかに異なる植物体の数、すなわち異型個体の数、によって均一性を評価することができる。しかしながら、その品種における変異の幅が大きい場合においては、繁殖の形質により、この場合には特に他家受粉品種、合成品種が含まれるが、その植物体は必ずしも類似しないのであるから、どの植物体を変型あるいは異型個体として判断すべきかを、視覚的に確認することが困難となる。このような場合において、均一性は、変異の範囲をすべて評価し、すべての個体を観察したうえで、比較対象となっている品種と類似するかどうかを判断しなければならない。上記2つのアプローチについては下記に説明する。

 

6.4.1       自家受粉品種及び栄養繁殖性品種の場合

6.4.1.1    異型個体を視覚的評価により判断する手法

ある植物体が、特別な繁殖形質を考慮に入れたうえで、区別性のテストにおいて使用された植物体の全体あるいは一部において発現した形質から、明確に区別されるのであれば、それはその品種の異型個体であると判定される。この定義は、均一性の判断においては、異型個体と対象品種の間における区別性の基準が、その対象品種と他の品種の間における区別性の基準(5.5.2を参照)と同じであることを示すものである。

 

6.4.1.2    測定的手法を用いた異型個体の判定

自家受粉品種及び栄養繁殖性品種の形質は、ほとんどの場合、視覚的に観察することができ、あるいは植物体グループにおいて、単一の測定によって観察することができる。しかしながら、一定の場合においては、異型個体を厳密に判定するため、あるいは主に自家受粉による品種及び栄養繁殖性品種における異型個体を判定するために複数の測定的な手法を用いることがあるのであり、その詳細は、TGP/10「均一性の審査」を参照されたい。

 

6.4.1.3    異型個体の数の判定のための統計的基礎

出願品種の個体数に応じて許容される異型個体の混入数は、ある一定の「混入標準数」及び「混入蓋然数」により定められる。「混入標準数」とは、すべての個体が審査されたならば許容される異型個体のパーセントによって示される。「混入蓋然数」とは、均一性があると判定されるために許容される混入の蓋然性を示す数値である。「混入標準数」及び「混入蓋然数」それぞれの統計的数値に基づき、推奨される「混入標準数」及び「混入蓋然数」は、個別テスト指針に明記されている。テスト指針はさらに出願品種の個体数において最大混入許容数について提示している。詳細については、TGP/10「均一性の審査」を参照されたい。

 

6.4.1.3.1 栄養繁殖性品種及び完全自家受粉品種

TGP/10「均一性の審査」は、特定の「混入標準数」及び「混入蓋然数」に基づき、いろいろな出願品種の個体数に応じて許容できる異型個体の混入数について記載している。

 

6.4.1.3.2 主に自家受粉する品種及び近親交配種

DUSテストにおいて、主に自家受粉する品種とは、完全に自家受粉する品種ではないが、自家受粉する品種として扱うべき品種をさす。これら主に自家受粉する品種及び近親交配種については、完全自家受粉品種及び栄養繁殖性品種に比べて、異型個体の数がより多い場合であっても許容される。この点についての詳細は、TGP/10「均一性の審査」を参照されたい。

 

6.4.2       他家受粉品種

他家受粉品種には、主に他家受粉する品種及び合成品種も含まれるが、これらの品種は、一般的に、栄養繁殖性品種及び完全自家受粉品種に比べて、品種内の変異の幅が大きく、異型個体の判定が困難である。そのため、同一の種類に属する比較品種あるいは既存品種の変異の幅との相対的な比較により判定される。このことは、他家受粉品種については、比較対象品種よりも著しく均一性が低いことにはならないことを意味する。さらなる情報及び新しいタイプ及び種のための基準を定める手引きについては、TGP/10「均一性の審査」及びTGP/13「新しいタイプ及び種のための手引き」を参照されたい。

 

6.4.2.1    視覚的に観察される形質

単一の植物体を視覚的に観察することによって判定される形質について許容される変異の幅は、比較される既存品種の変異の幅を著しく超えることはない。視覚的に観察される形質の均一性判断についての詳細は、TGP/10「均一性の審査」を参照されたい。

 

6.4.2.2.   量的に測定される形質

6.4.2.2.1 量的に測定される形質について許容される変異の幅は、比較される既存品種の変異の幅を著しく超えることはない。UPOVは、量的に測定される形質の均一性を判定するにあたって、いくつかの統計的手法を提示している。その一つは、組み合わせによる何年にもわたる均一性(COYU)解析である。

 

6.4.2.2.2 量的に測定される形質についての均一性判定の詳細については、TGP/10「均一性の審査」を参照されたい。

 

6.4.3       交雑品種における均一性の判断

6.4.3.1    通則

6.4.3.1.1 交雑品種における均一性の判定は、交雑のタイプ、例えばそれが単交雑品種なのかそうでないのか、近親交配系なのか、栄養繁殖性系なのか、他家受粉系なのかによる。

 

6.4.3.1.2 交雑品種における均一性及び安定性は、その品種自体の均一性及び安定性を審査することによるか、あるいは一定の場合においては、その親品種と交配種の均一性及び安定性を審査することによることができる。

 

6.4.3.2    近親交配系由来の単交雑品種

近親交配系由来の単交雑品種は、主に自家受粉する品種とみなす。しかしながら、必要な場合には、自家受粉の親品種の個体の許容量を追加することを認める。ただし、判定は種ごとに、また繁殖の方法によって異なることになるので、具体的なパーセンテージを定めることはできないが、そのような個体のパーセンテージは、審査トを妨げるほどのレベルを許容するものではない。必要に応じ、最大許容数はテスト指針に記載される。

 

6.4.3.3    近親交配系のみに由来しない単交雑品種

両親の少なくとも一方が他家受粉系の単交雑品種については、相対的比較による判定が用いられ、格別の他の証明がない場合には、それらは、他家受粉品種あるいは合成品種とみなされる。

 

6.4.3.4    多元交雑品種

6.4.3.4.1 単交雑品種以外の多元交雑品種(例えば3交雑品種あるいは2交雑品種)については、特定の形質の隔離が許容されるが、それはその品種の繁殖形質と合致する場合に限られる。そのため、疑いの余地のない分離した形質の遺伝が知られている場合には、予想される形態で遺伝していることが必要である。その形質の遺伝がしられていない場合には、自家受粉品種における他の形質と同様に扱われなければならない。すなわち、変異の許容数を、同一の種類に属する比較品種あるいは既存品種との相対的比較によってなすことになる(6.4.2を参照)。

 

6.4.3.4.2 自家受粉の親品種の発現の許容を判定するにあたっては、単交雑品種のための条件を適用する(6.4.3.2参照)。

 

6.5     関連性のない極めて変異的な植物体について

テスト試料には、極めて変異的であり、対象となる品種とは関連しない植物体が含まれることがある。それらは、必ずしも異型個体あるいは品種の一部として扱う必要はなく、それらの極めて変異的であって、対象となる品種とは関連しない植物体をテストから除外することが審査の対象となる植物体の数を不十分にすることがなく、あるいは審査を実行不可能にしない限りは、単にそれらを無視してテストを続行することができる。UPOVは、「テストから無視することができる」か否かは専門家の判断によらなければならないことを明記している。実務においては、少ない数の植物体によりテストがなされている場合には、ただ一つの植物体であってもテストに影響を及ぼすため、そのような場合においては「無視する」ことはできない。

 

第7章    安定性の審査

 

7.1     UPOV条約による要件

UPOV条約(1961年、1972年及び1978年条約)の第6条(1)(d)によれば、品種は、重要な形質において安定していなければならず、これは、繰り返し繁殖させた後に、または特別の繁殖周期があると育成者により判断される場合には当該周期の終わりに、重要な形質が変わらない場合に、安定性があるものとされる。同様に、1991年条約の第9条によれば、品種は、繰り返し繁殖させた後にまたは特別な繁殖周期がある場合にあっては当該周期の終わりに、関連する形質が変わらない場合には、安定性があるものとされる。

 

7.2     関連する形質・重要な形質

関連する形質あるいは重要な形質とは、少なくともDUSテストにおいて用いられたすべての形質を含むものであるか、当該品種について育成者権が付与された日において確立しているその品種の記述に含まれるものでなければならない。そのため、明白な形質のすべては判断の対象となり、テスト指針に記載があるか否かは重要ではない。

 

7.3     安定性判断のための手法

7.3.1       通則

7.3.1.1    実務的には、安定性のテストにおいては、区別性や均一性のテストほどの確定的な結果を求めることは一般的ではない。これまでの経験上、多くの品種のタイプにおいては、ある品種が均一であると証明された場合には、同時に安定性を獲得していると判断される場合がある。さらにはもしある品種が安定していないのであれば、作製された素材はその品種の形質とは合致しないし、育成者がその品種の形質に合致した素材を提供できない場合には、育成者権は取り消されうるものとなる。

 

7.3.1.2    必要に応じて、あるいは疑義があるような場合には、安定性についてのテストが実施され、次世代まで育成するか、あるいは新しい種あるいは苗をテストして、従前のものと同じ形質が表れるかどうかを確認することになる。安定性審査に関する詳細な手引きは、TGP/11「安定性の審査」を参照されたい。

 

7.3.2       交雑品種

交雑品種の安定性は、その交雑品種の安定性審査に加えて、親品種についての均一性及び安定性の審査によって判断することができる。

 

第8章    テスト指針の要素

 

8.1     個別テスト指針の対象

ほとんどのケースにおいては、個別のテスト指針は種ごとに作成されているが、一定のケースにおいて、テスト指針を、より広いあるいはより狭いグループ分けにおいて作成することもある。同じ種に属する異なるグループに分けられる品種は、そのグループごとに別個に扱うことができるし、テストラインを細かく分けることができるが、そのようなことができるのは、そのグループが、区別性の観点において基礎的な形質が確実に別個のものであると判断することができるか、一般に知られている品種のすべてと十分に区別できる(5.3.1を参照)ことを確実に判断できる適切な手法がある場合に限られる。そのような適切な手法については、TGP/9「区別性の審査」を参照されたい。

 

8.2.   テスト指針の整備

8.2.1       個別のテスト指針は、TGP/7「テスト指針の整備」に従って、整備され、必要に応じて改訂される。個別のテスト指針がその当該品種の適切な技術的実務者によって整備された場合、その草案は、当該品種に関連する分野における国際的な専門的組織等に提示され、意見を求めることになる。受領した意見に基づき、個別のテスト指針の草案はその技術的実務者により完成され、UPOVの技術委員会に提示され、承認のうえで公開される。

 

8.2.2    TGP/2「UPOVに承認されたテスト指針のリスト」には、UPOVに承認されたすべての個別のテスト指針が記載されている。

 

第9章    テストガイドラインがない場合のDUSテストの実施

 

9.1    概論

テストガイドラインは、継続的に作成、追加されており、最新のリストは、「UPOVによるテイストガイドラインリスト」(TGP/2)に提供されている。しかしながら、UPOVは、対象となる種についてテストガイドラインがない場合における区別性、均一性、安定性のガイダンスについて、次の手続きを推奨する。

 

9.2     UPOV同盟の他のメンバー国によるDUSテストの経験

9.2.1      UPOV同盟の他のメンバー国が既に対象の種についてDUSテストを実施した経験があるか、あるいはその国においてテストガイドラインを既に用意しているかを確認するため、「DUSテストにおける経験と協力」(TGP/5)を参照すること。

9.2.2      そのような経験がある、あるいはその国のテストガイドラインが存在する場合には、メンバー国は、そのような経験あるいはガイドラインを有する当該メンバー国に連絡を取り、概論の基本方針に従って、できる限り調和させるようテストを実施すべきである。次のステップとしては、当該メンバー国は、UPOV同盟に対し、「DUSテストの経験を協力」(TGP/5)に基づき、調和を目指したテストの実施の存在を知らせ、適切な場合には、UPOV同盟に対し、その対象となった種についてのテストガイドラインを準備するよう要望すべきである。

 

9.3     新品種又は新品種群に向けてのDUSテストの手続

9.3.1      対象となっている種あるいは品種群について他のメンバー国にテストの経験がなく、テストガイドラインも存在しない場合には、そのUPOV同盟のメンバー国自身が下記に述べる手段によりテストガイドラインを作成すべきである。

9.3.2      テストの手順を作成するにあたっては、本概論に規定されている基本方針に沿うよう、本書及びテストガイドライン作成のためのガイドである「テストガイドラインの作成」(TGP/7)に従うことが推奨される。

9.3.3      テストの手順は、経験と情報が許す限り、テストガイドラインの要件に従って文書化する。

9.3.4      次にUPOV同盟に対して、「DUSテストの経験を協力」(TGP/5)に定められている方法に基づき、テストガイドラインの作成を知らせる。それにより、同盟のすべてのメンバー国に情報が行き渡り、テストガイドラインの作成・蓄積に貢献することになる。

機能

基準

タイプ

1. DUS審査のためUPOVで認められた形質であり、同盟のメンバーが、個別の状況に適したものとして選ぶことができるもの

1.第4章4.2条に記載されるDUSテストのための形質の使用に求められる基準を満たすこと

2.少なくとも一つの同盟のメンバーにより品種の描写をするために用いられたことがあること

3.形質の長いリストがある場合で、それが適当であれば、個々の形質の利用の程度に関する指摘があってもよい。

標準的なテスト指針の形質

星印が付された形質

1.テスト指針に含まれる形質であること

2.DUSテストのため常に審査されており、先行する形質の発現の記述または地域的な環境条件がそれを不適当としている場合を除き、同盟の全てのメンバーにより品種の描写に含まれていること

3.機能1のために有益であること

4.病気抵抗力の形質の選別の場合には、特別な注意が払われること

1.品種の描写の国際調和のために重要な形質

1.書類上に記述されている形質が、例え異なる場所で記述されているとしても、個別にまたは他の形質とともに用いることによって、区別性の審査に用いられる育成試行から除かれる既に知られた品種の選別に用いることができること

2. 書類上に記述されている形質が、例え異なる場所で記述されているとしても、個別にまたは他の形質とともに用いることによって、類似の品種が同じ分類にされるために用いることができること

1.(a)質的形質又は

(b) 量的または疑似量的形質であって、異なる場所で書類上に記述された形質と既に知られた品種とを区別するために有益であるもの

2.機能1と機能2に有益であること

3. 星印のついた形質である及び/または、技術試問(Technical Questionnaire)または申請書に含まれること

追加的な形質

1.第4章4.2条に記載されるDUSテストのための形質の使用に求められる基準を満たし、かつ、基準を満たすことの裏付けが同盟のメンバーから入手可能なこと

2. 同盟のメンバーの少なくとも一つにおいてDUSテストの確立のために使用されことがあること

3.このような形質がTGP書類/5の「DUSテストにおける経験と協力」に含まれるようUPOVに提出されるべきこと

1.テスト指針に含まれない新しい形質を特定するために、同盟のメンバーによってDUS審査に用いられ、かつ将来のテスト指針に含めることを検討すべきものであること

2.新しい形質の確定を使用の協調を促進し、専門家による検討の機会を提供するものであること

分類のための形質

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