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UPOV条約における新規性についての注釈

UPOV/EXN/NOV/1

DATE: October 22, 2009

 

前文

1.本注釈は、UPOV条約における新規性についてガイダンスを提供することを目的としている。条約締結国の義務は、UPOV条約の条文中に定められているものに限られ、注釈については、これに関係する締結国の関連法令と不一致のないように解釈されなければならない。

 

2.本注釈のセクションⅠは、1991年UPOV条約第6条ならびに1978年UPOV条約第6条(1)(b)及び第38条が定める新規性に関する特定の解釈について述べるものである。セクションⅡは、1991年UPOV条約第12条及び1978年UPOV条約第7条が要求する新規性の審査におけるガイダンスを提供するものである。

 

セクションⅠ:新規性

(a)関連条文

3.1991年UPOV条約第6条ならびに1978年UPOV条約第6条(1)(b)及び第38条が定める新規性の内容は以下のとおりである。

(b)品種の素材

 

 

 


4.1991UPOV条約により明確となっているとおり、新規性についての条項は、品種の種苗と収穫物に関連したものである。

 

(c)育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合

 

 

 

 

 

 

 

 

5.1991年UPOV条約は、新規性が、品種の種苗または収穫物が、育成者により又はその同意を得て、その品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡(あるいは1978年条約に定める販売の申し出又は商業化)がなされた場合にのみ影響を受けることを明確にしている。

 

6.下記の行為は、新規性が喪失しないものと判断される。

(i)その品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡という要素が含まれない試験をすること

(ii)育成者の同意なく他の者へ販売その他の譲渡をすること

(iii)他の者への販売その他の譲渡であるが、それが育成者権の承継人に権利を承継するためである場合

(iv)他の者への販売その他の譲渡であるが、それが、育成者に代わって当該品種の種苗を増殖するためであって、育成者との合意に基づき、増殖した種苗は育成者に返還することが契約内容を構成する場合

(v)他の者への販売その他の譲渡であるが、それは、当該品種の評価のために屋外試験、実験室における試験、小規模の加工試験などを行うという契約内容を構成する場合

(vi)他の者への販売その他の譲渡であるが、それが法令ないし行政的義務によるものである場合。特にそれが生物学的安全性あるいは取引対象のための品種カタログに出展ないし参加することに関連する場合

(vii)他の者に対し収穫物を販売その他譲渡する場合であって、その収穫物は品種の育成における副生成物ないし余剰物であるか、上記(iv)ないし(vi)のおける副生成物ないし余剰物である場合。ただし、そのような収穫物は消費目的で、品種の特定がなされずに販売その他譲渡されなければならない。

(viii)公的なあるいは公的に認められた展覧会において品種を展示する目的で他の者へ譲渡する場合

 

(d)期間

7.当該品種の利用を目的とした販売その他の譲渡については、出願がされた締約国の領域と、それ以外の領域において、新規性に影響を与えない期間が異なっており、それは品種保護を求めるかどうかの判断のためには、各領域において育成者による評価に相当な期間を要するためである。樹木及びぶどうについてより長い期間が定められているのは、育成や増殖のスピードが遅いためである。

 

8.UPOVは、新規性と保護期間(1991年条約第19条及び1978年条約第8条)に関連して、樹木及びぶどうの概念についての情報について意見交換してきた。意見交換によれば、樹木及びぶどうの概念については異なった解釈があり、UPOVによる分類を定めることは困難とされた。各締結国における樹木及びぶどうの概念については、締結国ごとの関連法令を参照されたい(UPOVウェブサイト参照)。

 

(e)最近育成された品種

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9.本条による最近育成された品種のための暫定措置は、任意規定である。暫定的に新規性を認める目的は、初めて品種保護が認められたときの少し前に育成された品種であるものの、1991年条約第6条(1)(i)に定める期間内には該当しない場合に、そのような品種を保護するためである。本条を適用すると決めた締結国が取り得るアプローチとしては、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡に関し、その品種の出願がされた締約国の領域と、それ以外の領域において同じ期間、例えば4年以内、樹木及びぶどうについては6年以内、と定めることが考えられる。暫定措置を適用すると決めた場合には、育成者が当該措置の提要を求めることができる期間を限定すべきである。

 

10.最近育成された品種に新規性を認めるための暫定措置は、UPOV条約による品種保護を初めて法令として定める場合に含めることができる。また、一定の植物の属及び種に限定して保護を与える締結国においては、新規性を認めるための暫定措置を、新たに保護される属または種が追加されたときに、あるいはすべての属または種が保護対象となったときに導入することができる。

 

11.下記は、国または政府間機関が、1991年UPOV条約第6条(2)の任意的規定である「最近育成された品種」を、自国の法令に導入したいと考える場合の例示である。

 

第[6]条

新規性

[(1)][要件]品種は、育成者権の出願日において、当該品種の種苗または収穫物が、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は、新規性があるものとする。

(i) [国または政府間機関の名称]の領域において、出願日から1年遡った日

(ii) [国または政府間機関の名称]以外の領域において、出願日から4年遡った日。ただし、樹木及びぶどうについては、6年遡った日

(2)[最近育成された品種]第[ ]条に基づき、本法が適用していなかった植物の属及び種に本法を適用する場合は、[国または政府間機関の名称]の領域において、出願日から4年以内、樹木及びぶどうについては6年以内に、前項に規定する他の者への販売その他の譲渡が行われた場合には、(1)に規定する新規性の要件を満たしているとみなすことができる。

(3) 本条(2)の規定は、当該植物の属または種について本法が適用されたときから1年以内に育成者権付与の申請がなされた場合にのみ適用する。

 

セクションⅡ

新規性要件の試験

12.UPOV条約は、下記のとおり、新規性の要件の充足を審査することを要求している。

13.UPOV条約に定めるとおり、審査の目的で当局は育成者に対し、必要なすべての情報、書類又は試料の提出を求めることができる。この点において、当局は育成者に対し、その出願フォームの中で新規性の審査のための情報を要求することができる。育成者権付与の出願のためのUPOVのモデルフォーム(TGP/5「DUSテストのための試験及び協力」セクション2)のアイテム8は、次のとおりである。

 

14.1991年UPOV条約第30条(1)(iii)は、各締結国が、育成者権の出願に関する情報の定期的な公表を確保することを要求している。出願に関する情報の公表することによって、新規性要件の充足に関して、当局に異議を申し立てることが認められることになる。

1991年条約 第6条 新規性

(1)[要件]品種は、育成者権の出願日において、当該品種の種苗または収穫物が、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は、新規性があるものとする。

(i) 出願がされた締約国の領域において、出願日から1年遡った日

(ii) 出願がされた締約国の領域以外の領域において、出願日から4年遡った日。ただし、樹木及びぶどうについては、6年遡った日

(2)[最近育成された品種]締約国は、この条約又は従前の条約を適用していなかった植物の属及び種にこの条約を適用する場合は、最近育成された品種でそのような保護の拡大の日に存在していたものについては、前項に規定する他の者への販売その他の譲渡が前項に定める期限より前に行われた場合であっても、(1)に規定する新規性の要件を満たしているとみなすことができる。

(3)[一定の場合の「領域」](1)の規定の適用上、同一の政府間機関を構成するすべての締約国は、当該政府間機関の規則に定めがある場合は、当該政府間機関の他の何れかの構成国の領域において行われた行為を自国の領域において行われた行為とみなすために共同して行動することができる。そのような場合は、当該締約国は、その旨を事務局長に通報する。

1978年条約 第6条(1)(b)及び第38 新規性

(略)

1991年条約 第6条(1)

(1)[要件]品種は、育成者権の出願日において、当該品種の種苗または収穫物が、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は、新規性があるものとする。

1978年条約 第6条(1)(b)

(略)

1978年条約 第6条(1)(b)

(略)

1991年条約第6条(1)

(1)[要件]品種は、育成者権の出願日において、当該品種の種苗または収穫物が、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は、新規性があるものとする。

1978年条約 第6条(1)(b)

(略)

1978年条約 第6条(1)(b)

(略)

1991年条約 第6条(1)

(1)[要件]品種は、育成者権の出願日において、当該品種の種苗または収穫物が、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は、新規性があるものとする。

(i) 出願がされた締約国の領域において、出願日から1年遡った日

(ii) 出願がされた締約国の領域以外の領域において、出願日から4年遡った日。ただし、樹木及びぶどうについては、6年遡った日

1978年条約 第6条(1)(b)

(略)

1991年条約 第6条(1)

(1)[要件]品種は、育成者権の出願日において、当該品種の種苗または収穫物が、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は、新規性があるものとする。

(i) 出願がされた締約国の領域において、出願日から1年遡った日

(ii) 出願がされた締約国の領域以外の領域において、出願日から4年遡った日。ただし、樹木及びぶどうについては、6年遡った日

1978年条約 第6条(1)(b)

(略)

1978年条約 第38条

(略)

1991年条約 第6条(2)

(2)[最近育成された品種]締約国は、この条約又は従前の条約を適用していなかった植物の属及び種にこの条約を適用する場合は、最近育成された品種でそのような保護がなされた日に存在していたものについては、前項に規定する他の者への販売その他の譲渡が前項に定める期限より前に行われた場合であっても、(1)に規定する新規性の要件を満たしているとみなすことができる。

1991年条約 第12条 出願の審査

育成者権の付与の決定には,出願が第5条から第9条までに定める条件を満たすか否かの審査を必要とする。当局は,この審査において,当該品種を栽培その他の必要な試験を実施し,そのような当該品種を栽培若しくは試験の実施を指示し又は既に実施されたそのような試験の結果若しくは他の審査結果を考慮することができる。当局は,育成者に対し,審査のために必要なすべての情報,書類又は試料の提出を求めることができる。

1978年条約 第7条 品種の公的試験

(略)

1991年条約 第12条 出願の審査

育成者権の付与の決定には,出願が第5条から第9条までに定める条件を満たすか否かの審査を必要とする。当局は,この審査において,当該品種を栽培その他の必要な試験を実施し,そのような当該品種を栽培若しくは試験の実施を指示し又は既に実施されたそのような試験の結果若しくは他の審査結果を考慮することができる。当局は,育成者に対し,審査のために必要なすべての情報,書類又は試料の提出を求めることができる。

8.品種は、次に掲げる時より前に、育成者により又はその同意を得て、当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされている(1991年条約)。[育成者との契約により、販売の申し出がなされ、あるいは有償譲渡がされている(1978年条約)。]

 

[出願がなされる領域]において

 □ されていない     □ 最初にされた日(日付)

 その名称

 

[出願がなされる領域以外]

 □ されていない     □ 最初にされた日(日付)

 その名称

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