Plant Variety Protection Act Study Group
種苗法研究会
UPOV条約における育成者権の行使についての注釈
UPOV/EXN/ENF
DATE: October 22, 2009
前文
1.本注釈は、UPOV条約における、育成者権の行使についてのガイダンスを提供することを目的としている。条約締結国の義務は、UPOV条約の条文中に定められているものに限られ、注釈については、これに関係する締結国の関連法令と不一致のないように解釈されなければならない。
2.1つめのセクションは、1991年条約及び1978条約の関連条文を摘示し、2つめのセクションは、育成者権の行使のために取り得るいくつかの手段について述べる。
セクションⅠ:関連条文
セクションⅡ:育成者権の行使のために取り得る手段
UPOV条約は、その締結国に対し、育成者権の効果的な保護、すなわち育成者が権利を行使するための適切な法的手段について定めることを求めている。
下記は、必要に応じた権利行使手段の非限定的な列挙である。
(a)民事的手段
(i)育成者権の侵害を差し止めるあるいは予防する、ないしは証拠を保全する(例えばグリーンハウスから侵害品のサンプルを回収するなど)ための、本案判決前の仮処分手続
(ii)育成者権を侵害する行為、又はそのような行為の継続を禁止する民事訴訟
(iii)育成者権の保持者が被った損害を補償するためあるいはさらなる侵害行為を抑止するために適切な損害賠償を認める手続
(iv)侵害行為に供した物の廃棄ないし除却の手続
(v)育成者権の保持者が支弁した費用(例えば弁護士費用)を侵害者に支払わせる手続
(vi)侵害者に対し、育成者権の保持者にあてて、侵害品の生産や販売に関与した第三者に関する情報を提供させる手続
(b)税関手続きにおける手段
輸入
(i)税関が、育成者権に違反して生産された物の自由な流通を停止したり、それを没収、差押、廃棄するための手続
輸出
(ii)税関が、侵害品の輸出手続を停止する手続
(c)行政手続的手段
(i)育成者権の侵害を差し止めるあるいは予防する、ないしは証拠を保全する(例えばグリーンハウスから侵害品のサンプルを回収するなど)ための仮の手続
(ii)育成者権を侵害する行為、又はそのような行為の継続を禁止する手続
(iii)侵害行為に供した物の廃棄ないし除却の手続
(vi)侵害者に対し、育成者権の保持者にあてて、侵害品の生産や販売に関与した第三者に関する情報を提供させる手続
(v)育成者権に違反して生産された物の没収、差押、廃棄するための手続
(vi)種苗の審査や認証の責を負っている機関が、育成者権の保持者に対し、同人の品種の種苗についての情報を提供する手続
(vii)育成者権についての法令違反や、品種の名称に関する違反や名称の不正使用があった場合に、行政機関が制裁や罰金を課すことができる手続
(d)刑事的手段
育成者権を[商業的な規模において][故意に]侵害した行為に対し、刑事訴追し、処罰すること
(e)代替的な紛争解決手段
民事手続に代わりうる紛争解決手段の結果として得られる民事的手続(上述の(a)参照)
(f)特別裁判所
育成者権の審理のための特別裁判所の設置
*本文中、[]にて示した内容は、各締結国の法令の起草者において、それぞれの必要に応じて、選択するか削除するかの判断に任せるという意味である。
1991年条約 第30条 この条約の適用
(1)[この条約の適用のための措置]各締約国は、この条約を適用するために必要な措置をとるものとし、特に次のことを行う。
(i) 育成者権の効果的な保護のための適当な法的手段について定めること
(略)
1978年条約 第30条
(略)