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UPOV条約における収穫物に関する行為についての注釈

UPOV/EXN/HRV/1

DATE: October 24, 2013

 

前文

本注釈は、UPOV条約が定める、収穫物に関する行為(1991年UPOV条約第14条(2))についての育成者件の範囲についてガイダンスを提供することを目的としている。条約締結国の義務は、UPOV条約の条文中に定められているものに限られ、注釈については、これに関係する締結国の関連法令と不一致のないように解釈されなければならない。

 

(a)関連条文

 

 

1.1991年条約の第14条(2)は、収穫物に対して育成者権を及ぼすためには、収穫物が、育成者権の許諾を得ない種苗の使用によって得られたものであって、かつ、育成者がその種苗に関して育成者権を行使する合理的な機会がなかったことを要するとしている。以下は、「育成者権の許諾を得ない種苗の使用」と「合理的な機会」についてのガイダンスを提供するものである。

 

(b)収穫物

2.UPOV条約は、収穫物についての定義を規定していない。しかしながら、1991年条約の第14条(2)は、「保護されている品種の種苗を許諾を得ないで用いることにより得られた収穫物(植物体全体及び植物体の一部を含む。)・・・」と定めており、収穫物が、許諾を得ずに種苗を用いたことにより得られた植物体全体及び植物体の一部を含むとしている。

 

3.収穫物が植物体全体及び植物体の一部を含むという説明は、それらは増殖目的で使用される可能性があるのであるから、少なくとも収穫物の形態によっては、それが種苗として用いられる可能性があることを示している。

 

(c)許諾を得ない種苗の使用

種苗に関する行為

4.「許諾を得ない使用」は、その適用国において育成者の許諾を要するにもかかわらず、許諾を得ていない種苗に関する行為として規定されている(1991年条約第14条(1))。したがって、許諾を得ない使用とは、育成者権が付与され有効に存続している締結国のテリトリーにおいてのみ生じうるものである。

 

5.「許諾を得ない使用」に関し、1991年条約第14条(1)(a)は、次のとおり定めている。

第15条(育成者権の例外)及び第16条(育成者権の消尽)に規定する場合を除くほか、保護されている品種の種苗に関する次の行為は、育成者の許諾を必要とする。

(i) 生産又は再生産(繁殖)

(ii) 増殖のための調整

(iii) 販売の申出

(iv) 販売その他の販売手段

(v) 輸出

(vi) 輸入

(vii) (i)から(vi)までに掲げる行為を目的とする貯蔵

 

  したがって、第15条及び第16条に規定する場合を除くほか、「許諾を得ない使用」とは、対象となるテリトリーにおける種苗に関し、上記(i)から(vii)に定める行為であって許諾を得ていないものを意味することとなる。

 

6.例えば、育成者権が付与され有効に存続している締結国のテリトリーにおいて、種苗を許諾なく輸出する行為は、権限のない行為に該当することとなる。

 

条件及び制限

7.1991UPOV条約の第14条(1)(b)は、さらに、「育成者は、その許諾を与えるに当たり、条件及び制限を付すことができる。」と定める。したがって、第15条及び第16条に規定する場合を除くほか、「許諾を得ない使用」とは、第14条(1)(a)の(i)から(vii)に定める行為であって、育成者が付した条件及び制限に従っていない行為をも意味することとなる。

 

8.文書UPOV/EXN/CAL「種苗に関する育成者の許諾についての条件及び制限の注釈」は、1991年UPOV条約が定める種苗に関する行為について、育成者の許諾条件及び制限についてのガイダンスを提供している。

 

育成者権の義務的例外

9.文書UPOV/EXN/EXC「育成者権の例外についての注釈」のセクションⅠ「育成者権の義務的例外」は、UPOV条約第15条(1)が定める育成者権の義務的例外についてのガイダンスを提供している。「許諾を得ない使用」は、第15条(1)が対象とする行為には該当しないこととなる。

 

育成者権の任意的例外

10.1991年UPOV条約第15条(2)(任意的例外)は、「第14条の規定に拘らず、各締約国は、合理的な範囲内で、かつ、育成者の正当な利益を保護することを条件として、農業者が、保護されている品種又は第14条(5)(a)(i)若しくは(ii)に規定する品種を自己の経営地において栽培して得た収穫物を、自己の経営地において増殖の目的で使用することができるようにするために、如何なる品種についても育成者権を制限することができる。」と定めている。文書UPOV/EXN/EXC「育成者権の例外についての注釈」のセクションⅡ「育成者権の任意的例外」は、UPOV条約第15条(2)が定める育成者権の任意的例外についてのガイダンスを提供している。

 

11.締結国が任意的例外規定を自国法において定めようとする場合には、上記の「許諾を得ない使用」は、任意的例外の対象となる行為には及ばないこととなる。他方、第15条(1)及び第16条に規定する場合を除くほか、「許諾を得ない使用」とは、育成者権の効力の範囲に含まれ、締結国の自国法が定める任意的例外の対象とならない行為に及ぶこととなる。特に、「許諾を得ない使用」は、任意的例外において定められているところの、合理的な範囲内で、かつ、育成者の正当な利益を保護することを条件とするという制約に違反している場合には、そのような行為がこれに該当することとなる。

 

d)育成者権を行使する合理的な機会

12.1991年UPOV条約第14条(2)は、育成者が当該種苗に関して育成者権を行使する合理的な機会がなかった場合にのみ、収穫物についてその権利を行使できるとされている。

 

13.1991年UPOV条約第14条(2)における、「その権利」という文言は、そのテリトリーにおける育成者権、すなわち育成者はそのテリトリーにおいてのみ権利行使ができるという意味である(前述4.参照)。したがって、当該種苗に関して「その権利を行使する」とは、かかるテリトリーにおける種苗との関係において、育成者権を行使できるという意味である。

1991年条約 第14条 

(1)[種苗に関する行為]

(a) 第15条及び第16条に規定する場合を除くほか、保護されている品種の種苗に関する次の行為は、育成者の許諾を必要とする。

(i) 生産又は再生産(繁殖)

(ii) 増殖のための調整

(iii) 販売の申出

(iv) 販売その他の販売手段

(v) 輸出

(vi) 輸入

(vii) (i)から(vi)までに掲げる行為を目的とする貯蔵

(b)育成者は、その許諾を与えるに当たり、条件及び制限を付すことができる。

 

(2)[収穫物に関する行為]第15条及び第16条に規定する場合を除くほか、保護されている品種の種苗を許諾を得ないで用いることにより得られた収穫物(植物体全体及び植物体の一部を含む。)に関する(1)(a)(i)から(vii)までに掲げる行為は、育成者の許諾を必要とする。ただし、育成者が当該種苗に関して育成者権を行使する合理的な機会があった場合は、この限りでない。

(略)

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