Plant Variety Protection Act Study Group
種苗法研究会
INTRODUCTION~種苗法研究会について
私たち「種苗法研究会」は,知的財産権を扱うことが比較的多い8名の弁護士仲間が相寄って2009年10月9日に結成された研究会です。
植物の新品種を保護する権利は,いわゆる知的財産権の一と解すべきものではありますが,日本では,その権利を定める種苗法についての法律的構造や体系を理解するための法律的に信頼できる文献が,他の知的財産権分野に比して少ないと感じられます。もっとも,この権利の対象である生きた植物体は,環境や時間の変化に伴って微妙に変化するものであるらしいのに,その仕事に携わらない者が自らの五感でその実体に直接ふれたり見たりすることが困難であるという権利客体の実情が,机上での理論でも原理は納得できることが多い技術という権利客体や,紙の上に示されれば大方は内容明白であるという他の知的財産権対象とは異なっているという点に,この理解しにくさの真の原因があるのかもしれません。そして,この植物体の微妙な変化の存在とその予測困難性を伴うという権利客体の特性に由来するのでしょうか,少なくともその権利の及ぶ範囲については,明確性に欠けると感じられるところです。こういった感想,疑問を上記仲間の間で出しあっているうちに,「外国ではどのような法制なのか,付与された権利は我が国の育成者権と同様のものなのかを,法律実務を専門的に扱う我々が全員手分けして調べてみよう」ということで衆議一決したのが,この会の始まりでした。
そこで,まず何よりも,世界各国の新品種保護法制の基本となる制度である UPOV 条約,次に,私たちの語学能力を勘案して,その余の法制として,EU 法制,米国法,英国法,オーストラリア法,ドイツ法の各制度を調べることにしました。このようにして,この研究会では,担当者の本職である弁護士としての仕事の合間を縫って,少しずつ勉強を進めてきました。それがこの度,必須である各国条文とこれを実行するための付属的法令の翻訳が一応完成しましたので,これらを本ウェブサイトに公表することにした次第です。
他方,担当各弁護士は,上記の作業の間,この会の立ち上げの最大の動機であった,日本種苗法上の品種保護権である育成者権の権利としての実質,殊にその及ぶべき権利範囲をどのように確定するのかという中心的課題を意識しながら担当国法と日本法との法制の対比を念頭におき勉強を進めてきました。そして,この対比を折り込みつつ,担当国(地域)の特徴をまとめた論文を『種苗法の国際比較』と題して,法律専門誌「Law&Technology(L&T)」№75~82(民事法研究会発行)に発表させていただくことになりました(http://www.minjiho.com/shopdetail/000000000923/022/004/X/)。この論文に対するご批判,ご意見もいただけると幸甚です。そしてその際にはその各国法制における具体的な条文の参照は,今回のこのウェブサイトをご利用下さるようお願い致します。
私たちが7年余の歳月をかけてやってきた勉強が,新品種保護の権利を強固にすることに,何ほどかでも役立ってほしいと切に願っております。